Monotronを見てみる

Monotronのパッケージ
小さなパッケージに驚かされる

メーカーのカタログページ。発売前にメーカーのデモンストレーション音源や、メーカーに招かれたデモンストレーターの演奏やビデオが、Youtubeなどで、公開されたり。わくわくさせられるプロモーションだったといえる。

僕のところに届いたパックを見てびっくり。こんな小さいのか...。箱から出してみてさらにびっくり、え、これって、昔のカセットテープとほぼ同じサイズじゃん。電池駆動。単四電池が2本。えー、3Vでシンセかよ。電池を入れて、スイッチ入れれば2秒でシンセ。ギロロロロロ。

Lineに接続するすら忘れて、小1時間鳴らしまくった。

ツマミが真っ黒で、いま、ノブの設定がどうなってるのか分かりにくい。まずは、改造ネタ1発目としては、ノブの頭にシロポチの追加。シールを貼ってもいいし。
全体に小さすぎる。ライブパフォーマンスで、ボーカリストが手元で自分のマイクに向かって鳴らすというパフォーマンスには使えそうだ。
本体のリボンコントローラーは、1オクターブほどの音程しか出せない。これじゃ「かえるの歌」ぐらいしか演奏できない。バッハのメヌエットは、Low Bがあるので、頭のところだけなら弾けるかも。G線上のアリアはピッチノブを動かしながらレンジを変えながら....。さすがに、こりゃ無理がある。
垂れ流しノイズ系でギロロロっとやるなら、十分かもしれないけど、これでメロディーを歌おうと思ったら最低2オクターブは無いと厳しいかもしれない。リコーダー式にオクターブを上げるスイッチがついていればよかったのに。もし改造するなら、これは必須な機能かもしれない。

蓋を開けて見てみる

Monotronの基板、表から右側
Monotronの基板、KLM3035の文字に心躍る。(クリックで大きくなる)

フィルターは広告の歌い文句どおり。名機MS-10/MS-20と同じVCF回路が乗っていそうな気がする。特に発振ギリギリのところのトランジスタ、天国の扉が見ているにちがいない、ブリブリサウンド、たまらない。
ネット上では、pcm1723さんが、歴史的なこの回路をまま、その性能を拡張する実験をされたりしていて、30年以上を経てもいまだ、その筋では現役の回路。
左側の、14PinのICは、LM324。3Vから32V(+/-1.5V~+/-16V)というワイドレンジな電源で動いて、片電源で動かすときにはちゃんと0Vがでるという優れもの。この手の特殊能力をもったオペアンプ、多くの場合は出音そのものは残念だったりするのだけど、このICもその例には漏れない。単純な波形のVCOや、DCの制御部分には積極的に使うけど、複雑な倍音が含まれた(要するに音楽とか)信号を入れたときはマジに残念な音なのだけど、電源圧が限られているような場合には、本当に重宝する。
片電源で動かして0Vは出るけど、出力は(VCCが5Vの時は)3Vぐらいまでしか出ないのが使うときのポイント。
右肩にある8PinのICは、テキサスインスツルメンツのD級ヘッドホンアンプ、TPA6111A2。8オームで0.15W。ほんとD級は、高効率。
本体に内蔵された小さなスピーカーの出音は決してよくない。というか、音が小さい。フィルターを絞った(音量の小さな)微妙な音つくりができそうなのに、ちょっと残念。まあ、録音するつもりならLineから出せばOK、音量は大きな問題にはならない。

Monotronの基板、表から左側
Monotronの基板、左がわ(クリックで大きくなる)

基板の左側には、VCOと、LFO類が乗っているようだ。
見た目の一番のインパクトはピカピカ光る透明の軸。LFOは鋸状波で、レートにあわせて、軸が光る。透明の軸のVRの下にLEDを入れて光らせている。
このLFO、レートををあげてビロビロに変調すると、メロディを演奏しようとする気力が失せる破壊力。なるほど、ビブラートだったら指先でやれ、LFOはそんなもののためにあるんじゃない、という強い意思には納得させられる。しばらく使い込むときがつくのだけど、このLFOは、リボンのタッチに同期して立ち上がるので、レートを遅くして、次の立ち上がりが来る前に指を話してしまえば、ディケイのみのEG的にも動作する。
逆さについている14PinのICにはHA14と見える。これは、SN74AHC14のようだ。

触って見ればすぐわかるけど、リボンの複数のポイントを同時に触っても和音は出ない。シンセとはモノラルなのだ。和音がほしかったらハモンドかローズ弾けよ。シンセは単音なんだよ。ポリシンセ?ありゃ、邪道だよ。アルトサックスで和音でたら変だろ?バグパイプって、別の楽器になっちゃうだろう?単音しかでないのではなく、単音で出るののが、楽器としてのアイデンティティなんだよ、シンセの...なんてな事を思いつつも、複数ポイントを同時に押してみたりするわけだ。
僕が現在開発中のアナログシンセをコントロールするためのUIとしてのリボコンでは、エレキギターのタッピング奏法をカバーしたいというのが大きな開発テーマになっている。で、monotoronのリボコンだけど、1ポイント抑えて、追加で別のポイントを抑えると音程が下がる。リボンをレオスタットとして使っているらしい事が想像できる。
リボンの最高点と、最低点を同時にタップしちゃうと、リボンに供給されている電圧を、どこか(グランドか、Biasポイントのどちらか)にショートするも同然状態になる。リボンには過大な電流が流れて、電源回路が燃えるまえに、リボンに火がつくことになる。
基板のトレースを見ると、コレを保護するための抵抗がついてないように見える。5Vで動かしてるんだよな、電圧の0.1Vは血の1滴に相当するよなぁ。保護抵抗とか、可能な限り外したいよな。うんうん、基板をみながら、設計されたエンジニアの思いを読み取る
で、リボンの両端は、蓋がかなりかぶっている。たぶん、この蓋でリボンの両端を同時に触れられなくてして、リボンを焼く事故を防ぐ仕組みのように思う。
蓋を開けて改造の作業をしているときは、リボンの複数ポイント、特に一番上と一番下を同時にタップしたりしないようにしたほうがよさそうだ。

電源はどうなっているんだろう

さて、オペアンプの電源ピンにテスターを当ててみると、ここには、5Vが来ている。電源は乾電池2本だから、どこかに、昇圧型DC/DCコンバーターがあるに違いない。どこだろう..。
写真の一番左下のスイッチの隣に、4R7という黒丸が見える。コレ、コイル。ということはその上に見える6PinのICがDC/DCコンバーターに違いないという推理。基板をざっと見渡すと全部テキサスインスツルメンツのICが乗っていることから、この電源のICもテキサスに違いないと思いつつ、よっく見ると、「AUJ」という文字が見える。SMDは部品そのものが小さいので部品に自分の名前を書き込むことができないので、あとで識別可能な数文字の文字だけしか入れてないことが多い。Cの類は、のっぺらぼうが普通。一度はんだ付けしたら、どころか、しなくても机の上にばら撒いてしまうと、どれがどれだかまったくわからなくなる。
「AUJ」よ、お前は何者なんだ、とかつぶやきながら、テキサスインスツルメンツのホームページの昇圧形DC/DCコンバーターのカタログをチェック。このICの形状は「6SOT」というらしい事を確認。。昇圧型レギュレータのリストを部品の形状でソートして、一番最初に出たのが、TSP61070。ためしに開いてみると、このパッケージ記号は...AUJとなっている。1発目でビンゴを引いた。
仕様書によれば5Vなら200mAまで取れるとの事。ただ、馬鹿正直に200mAもとると、燃えるのが普通。メーカーはぎりぎりの数字をだしているのだ。たとえば、DIYではよく使う7805Lとか100mAまで取れるはずとか無理なことをすると、燃えてないだけで、うっかり触るとやけどする温度になってたりする。まあ、確かに焼けてはいないけど、近所にケミコンがあったら、あっという間にだめになるし、第一、そんな高温になってたら普通にその素子の寿命は著しく縮んでると思っていい。
普通のトランジスタとサイズの7805ですらそんな温度になるのだから、その数分の1の小さなICで、そんなに取れるわけが無いと思うのが自然。まあ、最新のスイッチングテクノロジーの魔法のような高効率があれば、実現できるんだろうけど、本気で200mA取ってやろうと思わないほうがいい。

monotronの取扱説明書をみると、アルカリの単四電池2本で8時間となっている。 こちらのページにも詳しいが、一般に単四電池は、900mA/h。1時間で900mA取れますよという容量。(本当に900mAとったら1時間持たないけど)Monotronは、8時間なのだから、大体動作には、100mA程度の電流が流れていると思っていい。なるほど、電源ICの定格の半分。音が出てないときのMonotronの消費電流を実測すると50mA強。まあ、倍のマージンを取ったんだと思う。丁寧な設計。
改造して部品を追加で乗せるとして電源として使っていい容量は50-60mA程度を限度としたほうがよさそうだ。

CVとGateを追加してみた

Monotronの基板、うら!
Monotronの基板の裏側(クリックで大きくなる)

基板の裏を見ると、あたかも改造狙いのDIYerを挑発するかのように、聞いたことのあるラベルがついたパッドが出ている。工場からあがってきた基板のチェック用のテストポイントなのだろうけど、端子にこの名前を付けるところ、やっぱり、あおられてる気がする。基板を通して、メーカーのエンジニアと小さな対話をしばし楽しむ
VCCというパッドには5Vが出ているし、Vbiasには、1.3V。9Vの電池でエフェクタとかやっていると、普通に、ちょうど半分の2.5Vをバイアスにしたいところだけど、ここでは、opAmpが、最大出力はVCCが5Vでは3V程度しか出ないのだから1.3Vはいい感じ。(てか、この場合は電源圧が低いのがネックだし、ちゃんと0Vが出るオペアンプの性能を評価すべき)
VCCのラインが、VCO、LFO、VCFとそれぞれのブロックにそれぞれ根元から3本のラインが伸びている様に見える。電源ラインをモジュール毎に分離することで、安定性をあげるのが狙いだと思う。僕なんかがやる場合にはえいやっと、共通インピーダンスにまみれた電源ラインを作ってしまう所、実に丁寧。さすがプロの仕事。

Monotronの基板にGateを追加
Monotronの基板にGateを追加(クリックで大きくなる)

それぞれのポイントをチェックしてみると、特に、Picthは、オペアンプの-pinに入っている。反転のサミングアンプのポイントだとすれば、ここに抵抗を1本追加してCVをいれれば、リボンからの音程とミックスするCVをいれられそうだ。いろいろ試してみて、Pitchのパッドは抵抗をいれてやればそのまま使えそうだ。
実際に動かしながらテスターでつつくと、オペアンプをコンパレーターとして使って、リボンの電圧に変化が出たときにゲートが出るようになっているらしい。Gateのランドに電圧を入れると、音程までずれる。
コンパレーターの、被比較側の電圧を変化させてゲートを作ればリボンの動作と並行で外部からのゲートをいれる事ができそうだ。
まいど、オッショさん(masa921さん)にご指導いただいて、デジトラを1発追加してゲートを追加してみた。
DTC114(デジタルトランジスタ)のエミッタを基板に向かって左側のオペアンプLM324の11pinに、コレクタを9pinに半田付け。トランジスタは引っ張られてムシれ無いように、LM324に糊付けする。ゲートは、トランジスタのベースに直結できる。デジタルトランジスタは内部に抵抗が入っていて追加の部品なしでオンオフが作れるのが、ポイント。この手の工作には便利。
基板の見方や、チェックポイントなど、本当に細かい点について、masa921さんにご指導いただいて、なんとか、CVとGateの追加改造は比較的簡単にできそうな事はわかった。
CVとゲートの追加方法に関しては、オッショさん(masa921さん)のページ、"KORG monotron CV/GATE入力改造"に大変詳しく出ている。回路図もそちらにあるので、参照されたい。

さて、よーし改造しちゃうぞ、という視点から見ると、メカ全体が小さすぎて、手が入らないというか、半田ごての先が入らないかも知れない。 これも、まいどのmasa921さんからご指導いただいたテクニックで、半田ごてを入れるまえに、当たっても平気なように、アルミテープを張ってに養生するといいのだそうだ。ま、僕は半田ごてで適当にやるけど。